モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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◆EBFgUqOyPQ
[saga sage]
2016/08/03(水) 22:53:14.15 ID:vTRpaymho
スマートフォンで何かを検索していたスーツの女性は、目的の物を見つけたのかニヤリと嗤う。
その画面に移されているのは、一般的には実名登録で広く知られるSNSのサイトであった。
「あの女、馬鹿正直に実名登録してるなんて楽でいいわね。
なるほどねぇ……、彼氏もいて、家族との仲も良好。職場にも恵まれてる。いい暮らししてるじゃない」
クツクツと嗤いながら女の口角はさらに角度を増していく。
画面に映し出されているページには先ほどの受付嬢の顔写真と、胸にぶら下げていたネームプレートと同じ名前が記載されていた。
この情報化社会において実名検索はあまり意味のないように見えて、実のところ非常に効果的である。
今回のようなSNSが検索にかかり容易に、かつ迅速に情報が得られることも有る。
だがそれ以上に仮にその名の残滓がだけが残っていようと、電脳の海は決して逃すことなく存在の尾を掴むことができるからだ。
イルミナPのように機械や電脳の分野に精通しているものならば他に様々な手段が講じられるが、彼女のようにそのような教養がないものでも容易に個人の情報が得られることこそが最大の利点であった。
「ずるずる……ずるずると。
幸せそうな関係者がいっぱいでいいわねぇ……。全部台無しにしてその恨みをこの女に吹っかけてやりたいわ」
画面の中には受付嬢の充実した日常が映し出されている。
いいこと、悪かったこと、日常の機微を記したその日記帳は折り重なった一つの成果だ。
彼女がこれまでに培ったものであり、形を成した城。
だがそれは砂場の城であり、無慈悲な悪魔に目をつけられれば一瞬で瓦解する脆いものだった。
「こいつの彼氏、住んでるところはそんなに遠くないわね。
手始めに彼氏さんの関係各所を全部台無しにして、あらゆる恨みを彼氏さんに吹っ掛けましょう。二人の人生設計はこれでお手軽に壊せるわね。
その次は、両親、兄弟を殺しましょう。全員分の面の皮を剥いで、マネキンにかぶせてこいつのアパートに直送してあげるのよ。
『あなたのパパとママ、お兄ちゃんから、飼い犬まで、これでいつも一緒に暮らせますねー』って今日の張り付けた笑顔でこいつに言ってあげるの。
ああ……ああああ、想像できるわ、泣いて狂って、憎悪の目でアタシを見るあの女。
だからまだ、もっともっと折ってあげなくちゃ。塵も残さず、最奥の感情を引き出さなきゃ……」
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