モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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◆GPqSPFyVMNeP
[sage saga]
2016/06/17(金) 22:10:00.01 ID:Lzf9MzY5O
飾り気のない下着はハカクドーで5組1000円の特価品。実家から届いたばかりの仕送りから引っ張り出したTシャツとショートパンツは成長期途中に着ていた古いもので、ワンサイズ小さい。
炎の踊り子装束を纏うたび、元の衣服は焼失する。ヒーローとして戦い暮らすことは、洋子が思っていた以上に、年頃の娘の大切な何かを犠牲にしているようだった。
「せめて、ちゃんとしたものを着られるぐらいには……」
そのためにもクライムハントだ。安定収入が先か、衣服尽きて失意の帰郷が先か。洋子はチャブ上の茶封筒を手に取った。
流し台兼洗面台に打ち付けられた鏡が、彼女の今を無遠慮に映す。衣服の丈は上下ともかなり短く、しかもボディラインが露わだ!
Tシャツの胸にプリントされた素性の知れぬキャラクターは左右に引っ張られ、彼女を嗤っているように見えた。
「……うぅ」
洋子は数秒間の逡巡の後、仕送り段ボール箱から野暮ったくもサイズには余裕のあるシャツを1枚引っ張り出し、煽情的な姿を隠すように羽織った。
小さくひと呼吸した次の瞬間、鏡の中の洋子の顔は既に恥じらう小娘ではなく、戦いの場に赴くヒーローのものに変わっていた。
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