モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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◆EBFgUqOyPQ
[saga sage]
2016/05/07(土) 18:09:38.39 ID:glNSs2qCo
守りたいなんて虚ろな思いは、自分の価値を守るための殻だと言う事実に気づかなかったことに。
そして、それが一番一番苦痛であったはずの者に伝えさせたということ。
だからアーニャは諦めたのだ。十年前から何も変わらない。
技術しか身に着けてこなかった彼女は、それを守ることしかできなかったのだ。
「私は……誰かを、大切だから守りたかったんじゃ、なかった。
自分の、ブナシェーニェ……価値を、経験を、守るために、あえて戦うという選択肢を、選んでました。
そんな私は……誇れ、ないです」
同じ自分であったからこそ、アーニャには『アナスタシア』の苦痛が理解できた。
ただ無為に、平和と言う中で闘争を選んだ自分がどれだけ愚かなことをしていたのかが、理解できてしまったのだ。
それは同時に存在理由を剥奪されたということであった。
彼女の価値は、自称する通り十年にも及ぶ戦闘技術だ。
その機械のような『機能』しか持ち合わせていないことを自覚し、人が誰しもが持つはずの『自由意志』の弱さが露呈すれば、自身の強さは一気に脆くなる。
「私は……最低です。無価値です。
だからきっと、中身のない私の、重さは、軽いの、ですね」
アナスタシアの本体は別にある。
今ここにあるのは、封印の残滓と残った天聖気、それと捨てられた意志だけである。
そしてその薄さゆえに、幽霊のように誰からも感知されないことに、アーニャは気づいていた。
たった一人、この公園のベンチを占拠していたとしても、誰も気づくことはない。
幽霊とも違う、残留思念に近い彼女を感知することは、ほぼ不可能であった。
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