70: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/04/17(日) 00:57:25.70 ID:WHcPEpPlo
ふと、視界の隅に気配を感じ取った。
ぼんやりと存在を感じる方へ、私は目を向ける。
すると、真っ白ではっきりしない地面に誰かが“いた”。
まるで、ずっと前からそこにいたとでもいうように。
若葉色の小柄な誰かがうずくまり、憐れな声で鳴いている。
生木を折るような軋む声で、さめざめと嘆いている。
ああ、私は奴を知っている。
呻きながら、それでも薄汚い何かに齧りついている。
そして、咀嚼して飲み込みかけたところで嘔吐する。
薄汚い何かは、腐乱した果実のような不快な色をしている。
見ていられなくなり、脇に視線をそらす。
すると、そこにもいつの間にか、誰かが“いた”。
群青色の誰かがだらしなく座り、聞くに堪えない声で唸っている。
背中を丸め、身を縮めて怯えている。
ああ、私は奴を知っている。
右の眼孔をまさぐる指の間から、黒っぽい液体を垂れ流している。
怯えながら、それでも無事な方の目をぎょろぎょろ動かしている。
足元には黒い水溜りができ、下半身もべたべたに黒く汚れている。
その染みに、白く不気味な球体が転がっている。
笑い声はやまない。
なぜ笑っているのだろう。
誰が笑っているのだろう。
声の源を探る。
けしからん奴だ。
いや違う。
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