46: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/03/21(月) 11:52:28.61 ID:d1B0J0ZHo
ジュプトル「へんなの」
ダゲキ「……」
ダゲキ「『ケシゴム ひろって くれて、ありがとう』、って」
ジュプトル「ケシゴムって、まずい しかくい しろいやつだ」
ダゲキ「……たべたの?」
ジュプトル「たべたけど、たべられなかった」
ジュプトル「あじ ないし、のみこむの できないし」
「そうなんだ」とまた苦笑して、ダゲキは空を見上げた。
あのレンジャーがいる昔の風景を思い出しているに違いない。
いや、あのレンジャー『と』いた風景か。
空気が冷たい。
長い息を吐いて、ダゲキはそのまま話を切り上げてしまった。
思いを馳せていただろう記憶についても、話す気はないようだ。
ふたりがどういう関係なのか、ジュプトルはまったく知らない。
あの人間は、自分が見たことのない、かつてのダゲキを知っているらしい。
だが、あの人間が元トレーナーだとは思えない。
そういう単純な経緯ではない、ということが窺い知れるだけだ。
彼がそうやって過去に目を向けている姿は、あまり好きになれなかった。
見ず知らずの土地に置いてけぼりにされたようで、少しだけ心細くなる。
勝手なものだ、とジュプトルは自分を罵った。
自分にも、きっと同じような瞬間があるに違いない。
それを見せているとき、友人たちもまた同じように心細さを感じるのだろうか。
ジュプトル「なあ」
ジュプトルは、ともすれば場違いなほど、つとめて明るい声を出した。
彼を『こちら』に引き戻したい一心だった。
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