374: ◆/D3JAdPz6s[sage saga]
2023/08/01(火) 23:33:13.57 ID:9Ps6NfVqo
ふと、館内のどこかで、雑音に紛れて声が聞こえることに気づいた。
それも独り言ではない。
明らかに二人が『話し合う』声だ。
場に相応しい小声というには、もう少し騒々しい。
やや距離があるのか、話している内容まではわからない。
アロエ(……今日は変な利用者も少ないと思ったのに)
アロエ(あんまり騒ぐようなら、ちょっと声かけなきゃいけないか)
靴音を潜め、アロエは書架と書架の間から歩み出た。
林立する書架コーナーの隣には閲覧スペースがある。
一人用サイズの机と椅子が並び、ちらほらと利用者が腰かけていた。
声はまだほそぼそと響いている。
話し合っているというより、どちらかといえば揉めているような印象を受けた。
やはり、見に行った方がよさそうだ。
アロエはあたりを見回し、声の出所を探す。
すると、閲覧スペースの片隅に目が吸い寄せられた。
男が二人、言い合いをしている。
あれが出所で間違いないようだ。
片方は着席しており、本の山を前にして机上の何かを押さえている。
特に目を引く服装でも、変わった様子でもない。
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