268: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/12/15(金) 00:43:00.31 ID:cuM9FlSYO
ゲーチス「外へ出した場合、どのくらい動けますか」
アクロマ「まだ水槽から出したことすらありません」
肩を竦めるアクロマは、少し忌々しげにすら見えた。
アクロマ「本格的な稼動試験は調整しているところです」
アクロマ「不安材料もないわけではありませんが、深刻ではありません」
アクロマ「これまで、前身プロジェクトが苦労してきた部分をほぼ、難なくクリアしています」
ゲーチス「では現状で一番、懸念されることはなんでしょう」
アクロマ「稼動試験の結果、そして『出所のはっきりしない要素』の副作用、でしょうか」
ゲーチス「おや、この上なく情報源ははっきりしているように思いますが」
ゲーチス「少なくとも、私とあなたにとっては」
アクロマ「……まるで神秘の霊薬だ」
ゲーチスは馬鹿にしたように首を振る。
『出所』を知ってなお不安を拭えない彼を、心から憐れんでいだ。
『霊薬』の正体を知っているのは、ゲーチスとアクロマを除けば、いないも同然だった。
以前も口を出してきた『横槍』が、また計画を妨害してきては困る。
『誰が知っているのか』というアクロマの問いに、ゲーチスはそう言って笑った。
ゲーチス「……まあ、あなた以外のプロジェクト参加者は、知りませんからね」
アクロマ「あちらのプロジェクトリーダーにもアドバイザーとして参加してもらっているのですが」
アクロマ「薄々ですが、彼は察しているようです」
ゲーチス「彼もまた、あなたほどではないにせよ、十分に優秀な研究者だということです」
ゲーチス「科学者の勘とやらが働くのかもしれませんね」
アクロマ「……そういうものでしょうか」
ゲーチスとしては褒めているつもりだった。
もっとも、アクロマから喜んでいる気配は微塵も感じられない。
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