262: ◆/D3JAdPz6s[sage saga]
2017/12/15(金) 00:20:47.26 ID:cuM9FlSYO
ふと気づく。
なぜ私の右腕は、今この瞬間、なんの問題もなく動いているのだろう。
いや、それはそもそも疑問に思うべき部分だったろうか。
ゲーチスは視線を上げる。
そこには、オフィスチェアに浅く座り、訝しげにこちらを見るアクロマがいた。
心配や気遣いではなく、戸惑いや不安が強い表情だ。
アクロマの座る椅子が耳障りな音をたてる。
彼の顔もまたモニタのせいか亡霊か幽鬼のようだ。
いや、もともとあまり血色のいい『たち』ではなかったかもしれない。
ゲーチス「なんでしょう」
アクロマ「聞いていましたか」
ゲーチス「失礼、考えごとをしていました」
アクロマ「……そうですか」
アクロマ「『彼女』はどうしていますか、とお訊ねしたのです」
アクロマは溜め息をつきながら答えた。
ああ、と息を吐いてゲーチスは目を閉じる。
ゲーチス「彼女は……今、休んでいるはずです」
ゲーチス「とても協力的で助かっていますよ」
アクロマ「私も何度か話をしました」
ゲーチス「老いぼれより、よほど目的と手段というものをよく理解している」
アクロマ「……しかし、なにが彼女をそこまで駆り立てるのでしょう」
ゲーチス「好奇心……憧憬……それから、反発心と独占欲といったところでしょうか」
ゲーチス「げに恐しきは、いつの世も女の執念です」
ゲーチス「……愚かなことだ、あそこで掴まなければ……」
アクロマ「? なんの話ですか」
ゲーチス「……」
アクロマ「どうかしましたか」
ゲーチス「いえ……」
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