261: ◆/D3JAdPz6s[sage]
2017/12/15(金) 00:18:03.90 ID:cuM9FlSYO
ゲーチスは、不意に思い立ってモニタから目を離し、自分の右手を見た。
見慣れたはずの自分の手だ。
その点において間違いはないのに、強烈な違和感がある。
ゲーチス(これは……いったい誰の手だ)
心の中で、ゲーチスは無意識に自問していた。
答えはわかりきっている。
荒唐無稽な妄想が浮かぶ。
いつの間にか、自分の腕は切り落とされていたとしよう。
そしてかわりに別の誰かの腕が継ぎはぎされたのだ。
腕は独自に自我を持ち、宿主であるゲーチスをじっと見ている。
入れ替わる隙を静かに窺っている。
ゲーチス(……子供騙しの空想だ)
自分でそう断じるわりに、根拠薄弱な“子供騙しの空想”は頭を離れない。
あり得ないことだとわかっているのに。
誰かが自分の内側から見ているイメージを、どうしても払拭できない。
ゲーチスは座り心地のいい椅子を軋ませた。
肘掛けから右手を持ち上げてモニタに翳し、しげしげと眺める。
手の甲、掌、と不審そうに手首を捻る。
見た限り、おかしなところはない。
次にその右手で、握っては開くを繰り返す。
いつも通り、思ったように動く。
痛みも、それ以外の自覚症状もない。
少しだけ腕を持ち上げると、外套が滑り落ちた。
ずれた外套を肘までたくし上げ、前腕を露出させてみる。
薄暗い部屋の中でモニタが冷たく光っていた。
その青白い光のせいで、右腕はまるで死人のようだ。
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