239: ◆/D3JAdPz6s[sage saga]
2017/09/11(月) 23:57:26.27 ID:rkTzmv0FO
まだ少しぼやけた誰かの声を聞きながら、ダゲキはまだ立ち竦んでいる。
五感が戻ってもなお身体はうまく動かない。
動かそうという気持ちすら起こらない。
意識はふわふわと漂い、半分眠っているような感覚だった。
そのうち、不思議な感触に気づいた。
自分の背中に誰かの手が当たっている。
敵意も悪意も感じられない、柔らかくて温かい手だ。
その手は、考えてみればずっと背中をさすっていた気がする。
ダゲキ(……こんな かんじ)
ダゲキ(まえにも……あった)
ダゲキ自身の記憶は、そこからまたあやふやだ。
いつの間にかアロエに手を引かれ、薄暗い書架の間を歩いている。
彼女はあれきり黙ったままだ。
いま聞こえるのは、アロエの硬そうな靴音とその反響だけだった。
彼女が立ち止まる。
反射的にダゲキも足を止めて視線を上げた。
億劫だったが、かろうじて周囲を見る。
風景に見覚えがある。
ここはどうやら、自分たちがいた部屋の近くだ。
アロエは近くの書架に手をかけ、何かの様子を窺っている。
そして折り曲げた指で硬い本棚をノックした。
書斎の奥から、ばたばたと慌ただしく動き回る音が聞こえ始めた。
アロエがダゲキを振り向く。
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