223: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/06/16(金) 23:30:24.03 ID:xCyGumQ8O
触れたことに対してか、かすかに彼の肩がひきつる。
身体の緊張が解ける気配はない。
立ったまま抱き抱えるように、がっしりした背中をゆっくりさする。
努めて穏やかな声でダゲキに話しかけた。
アロエ「すごく大きな音だったもんね」
アロエ「あたしもびっくりしたよ」
少しの間があって、彼は一度だけ、時間をかけてまばたきした。
それを認め、アロエはまた言葉を続ける。
アロエ「ゆっくりでいいから、息を深く吸ってごらん」
アロエ「そうそう、上手にできたね」
アロエ「そしたら、次はゆっくり吐く」
アロエ「……ちゃんと聞こえてるね? あたしの言ってること」
アロエ「今あたしたち、手を繋いでるのがわかる?」
アロエ「ここには、あたししかいないから」
アロエ「……だから大丈夫だよ」
アロエは言葉を切ってしばらく様子を見る。
少しずつだが、呼吸が落ち着いてきたのがわかった。
目はかすかに揺れ動き、まばたきの回数も増えている。
アロエ「……ごめんね」
アロエ「キミたちは今日、ものすごく頑張って、ここに来てくれたのにね」
反応はない。
様子から見て、聞こえていることは確かだが。
アロエはふと新聞記事を思い出した。
それから、シーツで頑なに正体を隠すあのポケモンが脳裏をよぎった。
次に、いま書斎で待っているだろうジュプトルやヨノワールのことも。
このダゲキもまた、心に傷を受けてあの森に至ったに違いない。
どういう経緯で受けたどんな傷か知らない。
だが、人間に原因があることは間違いない。
それを捕まえて、こんなふうになだめる権利が、自分にあるのだろうか。
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