217: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/06/16(金) 23:16:36.99 ID:xCyGumQ8O
声をかけ、懐中電灯をヨノワールの手に向ける。
ヨノワールは立ち止まり、振り返って“にっこり”頷いた。
通路の左右に並ぶ展示物に触れないよう、懸命に巨体を縮めている。
いつ見ても目玉はひとつしかないし、身振りもおどおどしている。
だがその目玉だけで、ヨノワールは思いのほか表情豊かなのだった。
「それはよかったねえ」と呟き、アロエは再び懐中電灯を前方に向けた。
アロエ「でも、あのシーツを被った子は、辛いのがちょっと苦手みたいだね」
アロエ「……あの子は酸っぱいのが好きなんだっけ?」
アロエ「辛いきのみが好きな子もいる、ってあの子から聞いてたから」
アロエ「もらいものの辛いヤツをとっておいたんだけど」
アロエ「さすがに、苦手な子にはキツかったか」
丸い光がケース内の展示物を次々に照らしていく。
指差された先を見るように、照らす先をダゲキが目で追っていた。
人間の大人ほどの背丈はないが、子供というには身長もありがっしりしている。
手を引いて歩くという意味では、あまり馴染みのないサイズの相手だ。
アロエ「ゴミとか変なものとか、落ちてたら教えるんだよ」
アロエ「それに泥棒とかがいたら、捕まえなくちゃいけないからね」
ぶうん、とヨノワールの声がした。
重大な任務を引き受けたと言わんばかりに、急に胸を張ってあたりを見回し始めた。
巨体を器用に滑らせ、一足先に――脚はないが――順路を進み、少し広い場所へ出る。
アロエ「あとは……そうだねえ、展示品で気になるものはあるかな」
アロエ「ちょっとくらいなら見てても、時間的には大丈夫だと思うから」
横目で見ると、ダゲキも物陰を気にしてきょろきょろし始めていた。
自分が言った通りに、落ちているものを探しているようだ。
アロエ(随分、素直というか、なんというか……)
アロエ(こんな子たちが、どうして森に逃げ込むことになったんだろう)
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