182: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/03/28(火) 00:46:57.20 ID:n9gHiMCwO
仕事を任されたヨノワールは、傍目にもわかるほど喜んでいる。
慌てふためいて周囲を見回し、背後の畳まれたシートを見つけた。
ヨノワールはいそいそとシートに手を伸ばす。
こちらを向き、抱えたシートを示して、何か言いたそうだ。
アロエは笑って頷く。
ヨノワールは更に目を輝かせた。
アロエ「キミもこっちに来るかい?」
ミュウツー『いや、私はここでいい』
アロエ「しょうがないねえ」
アロエ「じゃあ、誰かに運んでもらうしかないね」
そう言うと、アロエは慣れた手つきで『会食』の支度を始めた。
シートを運ばせたヨノワールにも、次々と指示を出す。
自身もてきぱきと紙皿を並べ、ふたたびスツールの方に視線を投げかけた。
アロエ(内緒話はあんまり得意じゃないんだけど)
アロエ(それで、キミはなんの話をしたいのかな)
ミュウツー『……自分でも、よくわからない』
そうこぼしながら、シーツの陰に隠れた首が下を向く。
視線が向いただろうその先には、それまで読んでいた本がある。
変わらず一定のペースで、本のページは淡々と捲られていく。
もっとも、字面すら追えていないのは傍目にも明らかだった。
アロエ(そういうことは、人間でもよくあるよ)
ミュウツー『そういうものか』
それきり言葉が途切れる。
アロエの周囲には、咀嚼するかすかな音と、誰かの身体がシートに擦れる音だけが響く。
なかなか次の言葉が続かない。
短い逡巡ののち、頭に響く声の主は、ふたたび『ロ』を開いた。
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