ミュウツー『……これは、逆襲だ』 第三幕
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163: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/01/25(水) 01:43:37.44 ID:UMm5BcIdO

焦りと同時に、じっとりした諦めが染み出した。

これは夢だから仕方ない、とわかっているからだ。

とうの昔に終わってしまった過去の記録だから、留めおくことはできない。


あっという間に、夢はずるずると崩れ、溶けてしまった。

手で掬った水が指の間を擦り抜けるよりも手応えなく。



がしゃん、という音が響いた――ような気がした。

同時に、バシャーモは自分が急激に覚醒したことを理解した。

良質な熟睡から目覚めたかのように、頭の中は妙にすっきりしている。


習慣として周囲の気配をそれとなく探る。

だが、たしかに耳にしたはずの音は、それらしい発生源さえ見当たらなかった。

誰かがこちらに意識を向けている気配もない。

身体に触れているのも、身体を預けている岩と湿った地面だけだ。

ひやりとしたコンクリートの床ではない。


どうやら、かなり昔の夢を見ていたようだ。

夢に聞こえた懐かしい呼び名に、バシャーモは強い郷愁を覚える。

明るさのない空を見上げて、思わず細長い溜息をついた。

楽しい時間が終わってしまうときの、あの寂しさだけが残る。


バシャーモ(……みんな、今はどこにおるんやろ)


あの場所にいた連中は、ばらばらに引き取られていったと聞いている。

今もどこかで、地下仕込みの腕を活かしているのだろうか。

だとしたら、実に羨ましいことだ。

それとも自分のように、戦いの場を奪われてしまっただろうか。


くるくると記憶が甦る。




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