162: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/01/25(水) 01:40:09.97 ID:UMm5BcIdO
ゆっくりと目を開ける。
目の前は薄暗くがらんとしていて、柵の向こうには弱々しい灯りがある。
声の主は、そこにゆらゆら動く影を落としている。
声のする方に、緩慢に顔を向けた。
――きょうの 戦いぶりには、胴もとも まん足している
――たん当してるぼくも、鼻が高い
――お前も嬉しいだろう、派手に殺せて
そうだ。
決まっているじゃないか。
――急所に当てるのは得意だもんな
思わず小さく頷く。
いかに無駄なく、圧倒的に斃せるかが肝心だ。
さもなくば、いかに痛々しく、見栄えのするように傷めつけるか。
それ以外、この生まれながらの破壊力になんの意味がある。
暴力的なだけのこの能力に、いったいどんな使い道があるというのだろう。
――そうだ、そのいき……
突然、自分の身体が後方に引っ張られ始めた。
風景は動かない。
なのに、意識だけが目の前の記録映像から引き剥がされていく。
この感覚は知っている。
夢の泥沼から、じりじりした現世へと浮かび上がっていく瞬間だ。
――つぎも よろしく……たの……よ……
声が遠のく。
風景も遠のいていく。
全てが凄まじい速度で曖昧になっていく。
一瞬、手を伸ばし掴もうと意識してみるが、まったく間に合わない。
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