146: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/10/24(月) 23:43:15.31 ID:GKUQ56mXo
ミュウツー(私たち……いや違う)
ミュウツー(“私”には、あまり時間がない)
ミュウツー(だが、だからといって……これはいくらなんでも自分勝手だ)
痛くなるほど顔をしかめ、ミュウツーは空を睨みつける。
油断すれば呻いてしまいそうな、妙な焦りが渦を巻き始めていた。
陽はすっかり落ちている。
もはや見下ろしても、さきほどまでいた場所すらよく見えないだろう。
ミュウツー(……なんだか、懐かしい感覚だな)
感傷に浸っている暇はない、と頭の隅に押しやり、ミュウツーは気を引き締める。
ミュウツー(それにあの時と今とでは、状況がまるで違う)
ミュウツー(あの時のように、何かを振り切って逃げようとしているわけではない)
ミュウツー(あの時のように、何かに嫌気がさして、目を背けようとしているわけでもない)
ミュウツー(なにより、今は……)
友人たちを一瞥する。
空に縁のないだろうふたりは下の景色に目を奪われ、ワアワアと言葉を交わしている。
そこに、丸く大きな影が寄り添って話に加わっている姿が見えた。
早く行かなければならない。
賑やかな友人たちを連れ、少しでも早く行動しようと気を取り直した。
これ以上、少しの時間も無駄にしたくなかった。
しばらく空を飛ぶと、いつものように街の灯りが近づいてきた。
初めて来たときより少し時間は早いが、明るさはそう違わないように思う。
奥の方に、ぼんやりと白く目立つ『博物館』が聳え立っていた。
大半の家屋には光がなく、窓も真っ暗だ。
いくつかの店らしい建物と街灯だけが細々と光を放っている。
それでも、夜の森に比べればずっと見通しがきく。
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