137: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/10/24(月) 23:25:45.76 ID:GKUQ56mXo
ぞろぞろと連れ立って移動することを考えれば、暗さはむしろ歓迎だ。
寒さも含めて、ああまで嫌がる理由は得心がゆかぬままだった。
活動に支障が出るほどの寒さを、ミュウツーは経験したこともなければ、想像もできなかった。
ミュウツー(この私が人間のところに、何度も行くことになるとは……)
ミュウツー(妙な話もあったものだ)
ミュウツー(しかも、こいつらを連れて行くとはな)
友人たちをなんとか説得し博物館に連れて行く、という約束だったはずだ。
あの夜、あの人間の女との約束。
その約束を果たすため、ミュウツーは友人たちを伴い、博物館に向けて出発しようとしていた。
ミュウツー(いや、『宿題』……だったか?)
――じゃあ……お友達の説得が、キミの宿題ね
ミュウツー(どんな言葉で言い表そうと、実態は変わらないか)
ミュウツー(やれと言われたことをやり終えて、それを示すだけだ)
だが彼女が意味深に強調した言葉を思い出すと、ミュウツーは妙に浮き足立つのだった。
なにかを、誰かに『任された』からだろうか。
本当のところは、自分でもわからない。
ミュウツー(『宿題』を終えた私に、あの女はなんと声をかけるのだろう)
今の行動は、自分や自分の周囲にどういう結果を齎すのだろうか。
ミュウツーの頭の中で、思考がぐるぐると拡散しては収束するばかりだ。
ミュウツー(いやそれよりも、あの女は『彼ら』を見て、なんと言うだろうか)
ミュウツー(それに、あの女と対面することで、『彼ら』はどう変わるだろう)
ミュウツー(いちど人間に背を向けた者が、再びまみえたとして……)
何かほんの少しでも踏み間違えれば、とんでもない結果を生むに違いない。
多少なりとも居心地のいいこの森や友人たちに、なんらかの累が及ぶかもしれない。
それは、まったくもって望むところではない。
にもかかわらず、頭の中は不思議と楽観的に鈍るばかりだった。
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