118: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/08/21(日) 00:51:11.39 ID:HsthgRdno
ゲーチス「……ところで、何か話したいことがあったのでは」
アクロマが一瞬、動きを止めてから、深くゆっくり息をついた。
何か事件があったとか、大発見があった、という程ではないようだが、様子はおかしい。
いつも以上に饒舌なのも、それゆえだったのだろうか。
ゲーチス「たしか、『例の個体』を調べているところでしたね」
アクロマ『……あなたは、あれをどこで手に入れたのですか?』
アクロマ『あなたが入手してきたあの個体は、極めて特異な存在である、と現時点でも断言できます』
アクロマ『なんといっても、人間を相手にあそこまで高度な言語コミュニケーションが可能なのです』
アクロマ『会話が成り立つのです、その意味はおわかりでしょう』
アクロマ『これは……あなたの追うイッシュの伝説とは別の意味で、とんでもない発見かもしれませんよ』
ゲーチス「でしょうね」
つとめて平坦な声で応じると、アクロマは少し気分を害したらしく口を噤んだ。
この発見の重大さが理解できないのか、と驚いているのだろう。
アクロマ『……あなたも聞いたでしょう、あの声』
アクロマ『あの個体と話をしたでしょう!』
ゲーチス「ええ、もちろん」
ゲーチス「あなたに先んじて、いろいろと個人的に、ですが」
アクロマ『でしたら、あなたにもわかるはずです!』
アクロマ『あの光景の異常さが!』
次第にアクロマの語気が強くなっていく。
なぜ自分と同じように驚き、取り乱さないのか、と責められているように思えた。
残念ながら今のゲーチスにとって、彼に共感を示すことは少し難しい。
ゲーチス「そうですね。とても稀有なことだと私も思います」
ゲーチス「もっとも、私はあなたほどの衝撃は受けていないのですが」
ゲーチス「なるほど、あなたも直接、あれと話をしたのですね」
アクロマ『……そ……いえ、もちろん、いえ……』
アクロマ『当初は立ち会うだけの予定だったのですが……』
アクロマは目を逸らし、ふたたび眼鏡に手を伸ばす。
眼鏡に触れる手が震え始めているのが、画面越しにもよくわかった。
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