117: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/08/21(日) 00:48:19.61 ID:HsthgRdno
聞き慣れた声がモニタ脇のスピーカーから響いた。
声がかすかに焦っているように聞こえる。
ゲーチス「ええ、構いませんよ」
アクロマ『少しお話を、と思いまして』
モニタに彼の顔が正面から映る。
薄く笑った顔には、わずかに疲労が透けて見えた。
アクロマ『いや……取り急ぎ、伺いたいことが、それこそ山ほど……ええと』
アクロマ『まず、イッシュの報告書を受け取りました。ありがとうございます』
アクロマ『一見すると、わたくしにはどんな意味があるのか理解しにくい情報でしたが』
アクロマ『あなたなりの利用価値があるということなのでしょうね』
ゲーチス「いやなに、大して意味のない、ただの周辺調査ですよ」
そうはぐらかすと、アクロマは露骨に不審の目を向けてきた。
こちらの言葉をまったく信じていないことが、手に取るようにわかる。
アクロマ『あなたは、無意味なことはしないはずですが』
評価されているのか嫌味なのか、ゲーチスにも彼の本心は見抜けない。
向こうも、薄ら寒い愛想笑いを浮かべるゲーチスの思惑は読みきれないようだ。
しばしの睨み合いののち、アクロマは肩を竦めて引き下がった。
腹の探り合いよりも優先したい案件がある、ということらしい。
アクロマ『……まあ、そういうことにしておきましょう』
アクロマ『この報告書で言及されているポケモンたちは、たしかに興味深い』
アクロマ『彼らの精神状態や能力には、少なからず気になる部分がありますし』
アクロマ『あなたがこれをどう活かすつもりなのか、楽しみです』
ゲーチス「あなたをがっかりさせずにすむといいのですがねえ」
アクロマは、ゲーチスの嫌味を聞きながら、しきりに眼鏡の位置を直している。
普段はあまり見せないしぐさだ。
ゲーチスはどういうわけか、ほんの少しだけわくわくしていた。
そのしぐさといい、普段はあまりしない『お話』といい。
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