114: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/08/21(日) 00:39:33.40 ID:HsthgRdno
写真の下辺には、赤みの強いオレンジ色の襟が写り込んでいた。
ヤグルマに常駐する『レンジャー』であることが、その色でかろうじてわかる。
もっとも、このレンジャーに、特筆すべき技能や経歴はない。
強いて注目するべき部分があるとすれば、勤務地の偏りだろうか。
一箇所の、具体的にはヤグルマでの勤務が妙に長い。
この年齢ならば、一度や二度は転属の機会もあったはずだった。
書類には、『本人の強い希望により』の一文が見てとれる。
ゲーチス(やけに希望が通っているのは、兄の地位が暗に考慮されているからでしょうね)
ゲーチス(本人にその自覚があるかどうか、それはわからないが)
ゲーチス(探りたいのは、なぜ希望し続けるか、の方だ)
数少ない、ヤグルマにこだわりを見せている人間ということになる。
ゲーチス(うしろの方にある『補足資料』だけが理由なら、まあいいのですが)
ゲーチス(……『何か』知っているから、という可能性もゼロではない)
ゲーチス(『ミュウツー』が関係するにしては、少し古すぎますが……)
個人的な理由でここに勤務しつづけているなら、それはそれで構わない。
だがレンジャー組織が何かを掴んでいて、監視役として配しているなら厄介だった。
ゲーチス(当面は引き続き、見張らせることにしましょう)
ゲーチス(場合によっては引き込めれば好都合だ)
ゲーチス(経歴を見る限りでは、そう難しくはなさそうですねえ)
研修時代の人物評を眺めながらそんなことを思った。
思想的にも実力的にも特徴のない凡庸な研修生だったようだ。
そんな人間があの森に執着する理由を想像して、ゲーチスはふたたびページをめくった。
469Res/395.47 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20