82:曇天の霹靂(お題:霹靂) 2/4 ◆NSr7d3y3ORk4[saga]
2016/03/09(水) 18:00:19.31 ID:BtpY/IcOo
「あ……今」
ふいに彼女の声が投げかけられた方向へと目を向ける。
一見いつもと変わらない灰空に目を凝らすと、濡れた指でこすられたように色が滲み、波打つベールに似た濃淡が現れていた。
こちら側はより深い燻し銀、あちら側には水色を一滴落とした藍鼠。
「思ったより薄いね」
「でも、蒼いわ」
緩慢に、けれど着実に青を重ねていく蒼空は彼女の注意を一点に集めて離さない。
それがなんだか気に入らなくて"これ以上青くならないで"と祈ったけれど、空はそんなボクに構わずどんどん表情を変えていく。
気付けばボク自身もあのどこまでも蒼い青に目を奪われていた。
「不思議ね……どうしてあの蒼は、どこを切り取ってもみんな決められたように同じ青なのかしら」
「だけど、なんだか作り物の気がしない。 きっと空は大昔からあの醒めるような蒼だったのね」
くいと引っ張られるような感覚。 そこで彼女の指がボクの上着の袖を掴んでいることに気が付く。
あの影一つない蒼空の向こう側には限りがあるのだろうか? 灰に満ちたこの世界こそ作り物ではないだろうか?
ボク達は引き延ばされた時間の中で、ただただ灰空の裏側を眺め続けていた。
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