文才ないけど小説かく 7
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74:『パノプティコンの女王様(お題:クイーン)5/5』[sage]
2016/02/24(水) 19:14:36.40 ID:pgV1oSIqo
 囚人たちの歓声がわき上がる。スリッパで檻を叩く。指笛を吹く。アイビーの指一本の動きにどよめき、静ま
り返り、再び興奮の叫びをあげる。
 アイビーは黒い下着だけの姿になって自らを取り巻く観衆に身体を見せつける。彼女の心臓はかつてないほど
激しく高鳴っている。指先が緊張と興奮で震えていた。服を一枚脱ぐ度に歓声が沸き上がる。その度に背筋に熱
い液体をそそがれる様な感覚が襲った。脳の奥からじゅわじゅわと何かが滲み出している。
 決して女性的に優れた肉体なわけではない。胸もないし背も高くない。しかしそんなことは関係がなかった。
露出されたのかむき出しのアイビーの魂であり、囚人たちにもそれがわかっている。
 熱いスポットライトが全身を照らしている。焼けるような快感、汗が粒となり肌を濡らす。
 パノプティコンの刑務所内は熱気に包まれていた。今やアイビーはブラジャーのホックを外し、胸を手で覆っ
ている。しゅるりとブラを下ろしそれを放り投げる。挑発するように周囲を見渡す。右腕で両胸を抑え、左手を
パンツのひもにかける。爆発したような男たちの声で建物が振動した。ガリレオ・ガリレイも大声で地動説を叫
んだ。
 騒ぎに気付いた警備員がやってきたのはそのときだった。
・・・・・
 もちろんアイビー・リーは解雇処分となった。地元誌によれば刑務所はパノプティコン構造にも問題があると
して、灯台の窓はマジックミラーで覆い、囚人たちから監視の姿が見えないように改善する予定だという。
 所長は真面目な所員の起こした事件に関して「アイビーは真面目で静かな女性でしたね。何故こんなことに
なったのか、さっぱりわからない」とコメントした。アイビーの心の中で何が起こったのか知っているものはお
そらく誰もいないであろう。彼女には恋人もなければ友人も無く、親戚とだって付き合いがなかったのだから。
 その後彼女がどこへ行ったのかは明らかになっていない。ゴシップ誌にはストリップ・覗き部屋界隈で有名な
女王になっているという記事が掲載されたが、根拠の無い噂話に過ぎない。人々は関心を失い、事件のことはす
ぐに忘れられた。
 確かなことは、壁はこわされたということだけである。


おわり



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