文才ないけど小説かく 7
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73:『パノプティコンの女王様(お題:クイーン)4/5』[sage]
2016/02/24(水) 19:14:01.21 ID:pgV1oSIqo
 どうあっても彼らに指一本触れられることが無いアイビーはこの事態に恐怖心も覚えなかった。
 むしろどこかくすぐられるような気持ちーーそれは彼女にとって初めての感情だったーーになった。いつの間
にか、わざと視線を向けずに焦らしたり、サービスしてウインクするようになった。そうすると檻の中の男たち
は大喜びしてみせる。見知らぬ快感の芽が胸の内に生まれ出て、急速に成長しつつあった。それは根を張り、葉
を広げ、今にも花びらを開くところだった。ことここに至り、異常性も忘れ、この現状を楽しむ自分がいること
にアイビーは気付いた。
 それは天体が動いているのではなく、地面が動いているのだと気付いたの同じくらい、大きな転回だった。
・・・・・
 そしてあの日、ベルリンの壁が壊れた年、地球は動き始めたのである。
 いつものように出勤し、薄灰色の制服で灯台に入ったアイビーは、やはりいつものように椅子に座って監視を
始めた。アイビーが来る時間をしっかり把握している囚人たちはすでに檻にすりよって灯台に向かって各々のア
ピールを始めていた。
 しかしいつも以上にアイビーは無愛想で、反応を見せない。囚人たちのアピールは次第しだいに勢いを失って
いった。
 ふとアイビーは立ち上がり、椅子の上に登ってぐるりと周囲を見渡した。
 なんだなんだ、と囚人たちは怪訝そうに灯台の中のアイビーを見た。
 アイビーは後ろにまとめた髪を解き、前髪を思い切りかきあげる。そしてゆっくりと上着を脱ぎ始めた。観衆
は息を飲む。アイビーは腰を左右にゆったりと振りながら、色気の無い灰色のズボンをおろしてゆく。柔らかそ
うな白い太ももが露出する。



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