353:家族の距離(お題:クレヨン)3/5[sage]
2016/12/28(水) 12:09:26.21 ID:K2s4O66Qo
その事件からしばらくして、夏休みに家族でプールに泳ぎに行った。とても大きい施設で、流
れるプールとかウォータースライダーとかいったものが一通り揃っているところだ。
施設の中はひどくごった返していた。空には雲ひとつなくて、太陽光が鋭くさすように肌を焼
いているような気がした。人いきれと蒸発したプールの熱気で僕は到着した時から気分が悪かっ
た。
僕は小学校の水着を履いて、妹はピンク色の水着にピンク色の浮き輪を肌身離さず持ってい
た。父と母は売店で食べ物と飲み物を買って、パラソルの下に座っている。二人ともプールで遊
ぶ気はないらしい。ついでに言えば僕も泳ぐのは好きじゃないし、妹はほとんどプールに恐怖心
を抱いている。
誰がプールに行こうなんて言い出したのだろう。確か父だ。彼は、子供ならプールが大好きに
ちがいないと決めつけている。さらに言えば僕が昆虫好きだと思っているし、妹がまだ絵本を読
むと思っている。実際にはそれらは数年前までの僕たちの好みだ。
僕は不満を言いたかったが、母が僕のことを家族行事に非協力的な子供だと評価するにちがい
ないから、なにも言うことはできなかった。
僕は妹の後をついて人ごみの中を歩いていた。妹はどのプールに入るでもなく、ピンク色の浮
き輪を腰に持ったまま、うつむきがちにてくてくとあっちへこっちへ歩く。彼女を一人放ってお
くわけにもいかないから、僕はお目付役のつもりでついていった。
それで行き着いたのがお土産などが売っている売店だった。シュノーケルやらゴーグルやら、
あるいはキーホルダー、置物などがある。妹が関心を寄せたのがクレヨンだった。
「〜〜プールクレヨン」という、プールの名前が冠されたもので、僕は後ろからそれを見なが
ら、なんでもあるものだと思った。
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