文才ないけど小説かく 7
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201:ななしのラムネ様(お題:ななし・ラムネ) 5/9[saga]
2016/07/01(金) 00:09:14.76 ID:Uf2E1B1ho

 「私」がまだ「俺」だったころ。
 家が近くでよく登下校を共にしていた黒髪の似合う彼女は、ある日の帰り道にこんな話をしてくれた。 
「ね。ね。知ってる? ななしのラムネ様のうわさ」
 日差しが強い夏の日だった。少ない小遣いでも買えるラムネを握りしめていた俺は、自分の手の中のそれと彼女の顔
とを二、三度見比べ、首を横に振った。
「なに? その……ナントカサマって」
「ななしのラムネ様、だよ」
 くすくすと無邪気に笑う彼女。一方の俺は、揺れる長い黒髪がきれいだな、なんて場違いなことばかり思っていた。
「あのね、私も聞いた話なんだけど――」
 彼女の言うところによると。通学路の途中にある小さな神社。今は使われていないそこの賽銭箱の奥、人目につかな
いその陰に、中身を半分だけ飲み好きな子の名前を書いたラムネ瓶を置いておくと不思議なことが起こる、というもの
だった。
「不思議なことって?」
 年頃の少年であった俺からして見れば、それこそが話の肝である。話の中に「好きな子」というワードが出てきた段
階でおおよその見当はついていたのだが、それでも俺は興奮を隠しきれずに先を急かした。
 そんな様子がおかしかったのか。やはりくすくすと笑いながらも、彼女は続けた。
「次の日。もしもその瓶が空っぽになって、名前も消えてたら。その相手と両想いになれるんだって――」


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