14:白い空の下で 3/4 ◆d9gN98TTJY[saga]
2016/02/07(日) 23:18:25.68 ID:lRIA5Tkuo
巧く抱かないと曲がりくねって滑り落ちる。あの柔軟な身体はもう無くて。
手に抱いた硬さと冷たさばかりが思い出される。
空を見ている。
体中にあった暑さも、胸を焦がす程の熱ももはや感じられない。ただ、寒さと冷たさばかり
が今のこの身を満たしていた。
確かに見えていた筈の事が、どこか遠い事の様にしか思えなくて、ただ空を見ている。
涙で霞むに任せて、空を見ている。
確かにあるはずの雲も見えず。
確かに降るはずの雪も見えず。
確かに浮かぶはずの息も見えず。
ただ真っ白く塗りつぶされる、霞んだ空を見ている。
雪雲は他の雲よりは地に近いのだと、どこかで得た知識ではそう判っていても、涙で世界
が滲む時でもないと、その近さを実感できないままでいて。
何の心の準備もできていない幼子の様に、突然の現実に振り回されるしかなくて。
それでも、困惑しながらも別れを済ませる事ができていた事に今さら気づいた。
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