勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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68:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:40:14.79 ID:09+TUdRc0
僧侶「くっ…!」

 滲んだ涙を慌てて拭って、僧侶は自分を叱咤する。
 何を呆然としていたのだ。仲間が傷ついたのならば、一刻も早くそれを治療する。
 それが自分の役割ではないか。自分などそれしか出来ない無能ではないか。
 ならば全うしろ。それだけは他の誰にも後れをとるな。

僧侶「呪文・―――極大回復ッ!!!!」

 僧侶の体内で紡がれた魔力が彼女の持つ精霊杖・豊潤を伝い、循環し、増幅されて放たれる。
 放たれた魔力は可視化されるほどに濃密で、柔らかな輝きをもって倒れ伏すパーティーの体を包んだ。
 対象の範囲を複数人に広げたことで即効性こそ失われたものの、それでも目を見張るほどの速度で皆の傷口が塞がっていく。
 ヒュウ、と騎士は感嘆の息を漏らした。

騎士「すげえな。どいつもこいつもわりと致命傷だったのに、あっという間に回復しちまいやがる。宝術による呪文効果のブースト、精霊装備による魔力の底上げ……勿論それらも大きな要因ではあるだろうが、そもそもの回復呪文のレベルが桁違いだ」

 騎士は僧侶に視線を送り、にやりと笑った。

騎士「初めて会った時と比べたら、見違えるぜ。頑張ったんだな、お嬢ちゃん」

 騎士に見られるだけで心臓を射抜かれたようなプレッシャーを感じながらも、僧侶はぐっと唇を引き結んで呪文の行使を続ける。
 騎士に対して、その頭上から襲い掛かる影があった。
 右腕と翼を捥がれ、木の枝に引っかかっていた竜神だ。



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