勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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409:名無しNIPPER[saga]
2016/11/06(日) 01:22:13.08 ID:ZSsiH8ra0
大魔王城大広間に剣戟の音が木霊する。
剣を交えているのは『伝説の勇者』とそのかつての愛弟子である戦士だ。
戦士「つああッ!!!!」
裂帛の気合いをもって振るわれる戦士の剣は、しかし悉く『伝説の勇者』に打ち払われる。
戦士「チッ…!」
斬り払われた剣を握りなおし、体勢を整えた時には『伝説の勇者』の剣が戦士の目前に迫っていた。
戦士「うお…!」
戦士は大きく体を逸らし、そのまま後方にバク転して一度『伝説の勇者』と距離をとった。
戦士「くっ…!」
『伝説の勇者』の追撃はなかった。
体勢を整えてから、戦士は一度大きく息を吐き、剣を構えなおす。
その顔には陰りがあった。
戦士はその端正な顔に眉根を寄せて、苦々しく目の前の男を睨み付けていた。
伝説の勇者「強くなったな、戦士」
優しい声音で目の前の男はそんな言葉を吐く。
やめてほしい、と戦士は願った。
かつて敬愛してやまなかった師。その背中を追い続けてきた男。
覚悟は決めたはずだった。その男が敵に回った瞬間に自分の感情は切り捨てたつもりだった。
だけど、目の前の男は余りにも思い出の中の姿のままで――――胸に去来する思いが、どうしても戦士の剣を鈍らせた。
戦士「うあああああああああ!!!!!!」
そんな自分が許せなかった。
獣のように雄叫びを上げたのはそんな自分を打ち払いたかったからだ。
戦士(ふざけるな!! なんなんだ私は!! 私が! ここで私がやらないと!! でないと……!!)
煩悶する戦士の横を追い抜いていく影があった。
勇者だ。
戦士「あっ…!!」
咄嗟に伸ばした戦士の指先は勇者のマントを掠めただけだった。
勇者は『伝説の勇者』に向かって飛びかかり――――二人の持つ刃が交差した。
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