勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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408:名無しNIPPER[saga]
2016/11/06(日) 01:21:37.44 ID:ZSsiH8ra0
 ここに至り、ようやく彼は自身の置かれた状況について理解が及んだ。

 そう―――――『始まりの国』において、もはや彼の存在は神格化しており、彼の発言、行動は全てが是とされてしまう。

 例えどんなに荒唐無稽な政策を王に具申したって、王はそれを実施するだろう。

 例えどんなに的外れな軍事作戦を展開したって、部下たちは何も疑問に思うまい。

 この事実は、彼に非常に大きな重圧を与えた。

 だってその事実に気づいてから、彼は決して間違えられなくなってしまった。

 誰も彼の過ちを糾してなんてくれないから、彼は自分だけで正解を掴まなければならなくなってしまったのだ。

 彼がその状況に開き直ることが出来れば、王をも凌ぐ権力を得たのだと喜ぶような感性の持ち主であれば、まだ良かったのだろう。

 だけど彼はまったく清廉潔白で、良心に満ち、正義感に溢れていた。

 彼は『絶対的な英雄』として、皆の期待に応え続けようとしてしまった。

 そして―――――応え続けることが出来てしまった。


 かくして彼は、『絶対的な英雄』としての当然の流れとして魔王討伐に旅立つ。

 その心に、僅かに黒い影を落としたまま。





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