勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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272:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:21:06.62 ID:Trw4ei5x0
 気付けば、夜になっていた。
 特訓広場にはもう誰も居ない。
 勇者は自分の家に足を向けた。
 玄関の扉を開け、中に入る。鍵はかかっていなかった。
 勝手知ったる廊下を歩き、見慣れた扉を開けて中を覗き込む。
 燭台の明かりの下で、男の子が書物を開いていた。
 読んでいるのは魔術書――魔法を使う基礎知識を身につけるための教本だ。
 ページを捲る男の子の指は包帯にまみれている。
 目の下の隈が酷い。疲労が相当に蓄積しているのだろう。
 男の子はごしごしと目を擦り、本を読み進める。

勇者(…………はは)


 ――――ああ、もう、本当に哀れだなぁ

 本当に哀れで――――滑稽だ


勇者(なあ、知ってるか? お前がそうやって必死でこつこつ頑張ってる間、アイツはな――――)

 男の子の机の上に堆く積まれた本の山の中に、図書室で読んでいた『大陸冒険録』があった。
 ページの途中にいくつも栞が挟まれている。
 その本を読む意味合いも――――きっともう変わってしまっていた。





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