勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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266:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:17:12.67 ID:Trw4ei5x0
勇者「はひぃ、ひぐ、うっぐ、うぅ……!!」

 勇者は子供のように泣きじゃくっていた。
 嗚咽が止まないのに走り続けるから、息が乱れて呼吸もままならない。
 苦しくて苦しくてしょうがないのに、それでも勇者は走り続けた。
 走り続けなければ、胸の内から次から次へと沸いてくる、正体不明の衝動に押し潰されてしまいそうだった。
 石につまずいて、勇者は盛大に転んだ。
 だけどすぐに立ち上がって駆け出した。
 目からは涙が溢れ、鼻水を垂れ流し、涎が口の端から糸を引いている。
 けれどそんな物に頓着する余裕などとうに失っていた。
 涙を拭うこともしないから、目の前の景色はずっとぼやけていて不明瞭だった。
 そんな状態で走っていたから、勇者は地面に広がる毒の沼に気付けず、沼の中に思いっきり足を突っ込んでしまった。
 泥に足を取られて転倒し、勇者の体が毒の沼に放り出される。
 助走をつけて飛び込んだようなものだったから、泥の抵抗などあってないようなもので、勇者の体はその全身が瞬く間に汚泥に沈んだ。
 毒の浸食を受け、勇者の全身の皮膚がじゅうじゅうと音を立てて爛れていく。
 耐え難い責め苦に晒されながら、しかし勇者は足掻こうとしない。

勇者(もういい……何もかもが、どうでもいい……)

 勇者は目を瞑り、全身の力を抜いた。
 ずぶずぶと、重力に引かれるままに、勇者の体が汚泥の底に沈んでいく。





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