勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
1- 20
264:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:15:48.85 ID:Trw4ei5x0
勇者「謝罪とか、そういうのいいからさ……ほら、立てよ『伝説の勇者』」

 一転して、一切の感情が抜け落ちたように、勇者は抑揚のない声で男に話しかけた。

男「え…?」

勇者「え、じゃなくて、ほら。立って、これから大魔王をぶっ倒しに行くんだよ。ほら、早く」

 勇者の声が段々と震えだす。

勇者「今からでも遅くねえからさあ……頼むよ……俺の人生に、どうか意味を与えてくれ……」

 男は勇者から目を逸らし、言った。

男「……出来ない。それは、出来ないんだ……! すまない…本当に、すまない…!!」

 勇者の手から力が抜けた。
 解放された男の背中が地面を打つ。
 ふらふらと勇者は立ちあがり、くるりと男に背を向けた。

魔族母「あなた!!」

魔族娘「パパ!!」

 魔族の母娘が男の元へ駆け寄って来て、その顔を心配そうに覗き込んだ。
 父の無事に安堵すると共に、魔族の娘はキッ、と敵意をもって勇者を睨み付ける。
 その視線に反応し、ちらりと後ろを振り返った勇者だったが―――すぐに前に向き直り、駆け出した。
 行き先も定まらぬまま。
 心の平衡を欠いたまま。

戦士「勇…!」

 戦士は即座に勇者の背中を追いかけようと一歩を踏み出す。

男「お前はまさか、戦士…か…?」

 人生で最も敬愛してやまなかった男からの呼びかけ。
 戦士の足が、ぴたりと止まった。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
758Res/394.23 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice