勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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24:名無しNIPPER[saga]
2016/01/31(日) 21:53:20.72 ID:zBP9Ql630
騎士「ぐぁっ、があああああああ!!!!?」

 ビシャァァアアン!!!! と、凄まじい衝撃が騎士の体を打つ。
 それまでの呪文二連撃によって勇者の指先に意識を集中させられていた騎士は、頭上から降り注ぐ雷に碌な反応も示すことは出来なかった。

騎士(なんっだこりゃあ!!? 今の光と音…そして、このダメージは一体…!?)

 騎士の脳裏に、武の国で兵士長と共に目撃した情景が蘇る。

騎士(雷…!? 勇者の奴、まさか雷を呼んだってのか!!?)

 呪文・大雷撃【ダイライゲキ】。雲なき空より雷を発生させる奇跡の業。
 これこそが、勇者が光の精霊より賜った呪文だった。
 精霊最上位である光の精霊の加護の下に放たれるこの一撃の前には、他の精霊の加護をどれだけ集めていようと意味を為さない。
 雷は騎士の持つ桁外れの加護すら紙のように貫き、甚大なダメージを与えた。
 この効果だけでも恐るべき呪文だが――――実はこの呪文の真価は、むしろ直撃後にこそ発揮される。

騎士(確かに大した威力だが――――意識を持ってかれる程じゃねえ!! この程度なら、十発食らったって耐えられる!!)

 歯を食いしばって痛みに耐えた騎士だったが、視線を勇者の方に戻してぎょっとした。
 いつの間に現れたのか―――戦士と武道家が、自分に向かって突撃してきている。

騎士(な―――!? こいつら、今までずっと隠れていやがったのか!!? クソ、しゃらくせえ!!!!)

 剣を握り、二人を迎撃しようとした騎士だったが、自身の体の変調に気付き愕然とした。

騎士「あ……ぐぁ、か……!?」

騎士(体が…痺れて動かねえ!?)

 そう、これこそが呪文・大雷撃の真価。
 直撃した対象を痺れさせ、その体の自由を奪う。
 無論、それで奪える時はほんの一瞬程度ではあるが―――騎士達のレベルの戦いになれば、その一瞬で十分に明暗が分かたれる。
 戦士が精霊剣・炎天を振りかぶる。
 武道家が精霊甲・竜牙を纏った拳を握りしめる。
 二人の装備は共に神秘の結晶、精霊装備。直撃すれば、加護レベルの差を覆してダメージを通すことが出来る。
 たとえ騎士のような化け物を相手にしても―――問題無く致命傷を与えることが出来るだろう。

騎士(がああああああああああああああ!!!! 動け動け動け動けぇぇぇえええええええ!!!!!!)

 騎士は己の両腕に全神経を集中する。
 引き攣ってまともに動こうとしない指先を、それでも無理やり曲げて剣を握る。
 その執念により、騎士は二人の攻撃が直撃するよりも一瞬早く、己の体の自由を取り戻した。
 だが―――二方向から同時に迫る攻撃を躱しきることは、如何に騎士といえども不可能であった。



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