勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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23:名無しNIPPER[saga]
2016/01/31(日) 21:52:16.12 ID:zBP9Ql630
 勇者は騎士に向かって再びその指をさした。

騎士「……あん?」

勇者「呪文―――大火炎ッ!!!!」

 勇者の指先に魔力が集中し、業火を生み出す。
 直径三メートルにも及ぶ大火球が騎士に向かって直進する。
 しかし騎士に焦りはない。
 既に見慣れた技だ。何の脅威も無い。

騎士「何のつもりだ?」

 騎士が剣を振る。
 湖月の力を発動させるまでもない。
 ただそれだけで火球は斬り飛ばされ、霧散する。
 火球が散って、勇者の姿が騎士の目に入った。
 勇者は先ほどと変わらぬ立ち位置で、まだ騎士に向かって指を伸ばしている。

勇者「呪文・大烈風ッ!!!!」

 勇者の指先から風の塊が射出された。
 騎士はその攻撃を躱そうともしなかった。
 風の塊が騎士を直撃する。
 呪文の直撃を受けて、しかし騎士は微動だにせず、呆れと失望を顔に浮かべてぽりぽりと頭を掻く。

騎士「……で? これが何だってんだ?」

 勇者の呪文は知っている。
 そしてそのどれもが、今のようにたとえ直撃したとしても騎士の強固な精霊加護を貫けない。

騎士「剣で勝てないから呪文で勝負……まさかそんな単純な結論を出した訳じゃねえよな?」

 騎士の問いに、勇者は笑みを浮かべて答えた。

勇者「いやあ……お前の言う通りさ。剣じゃ絶対にお前に勝てない。だから―――呪文で勝負させてもらう!!」

 勇者の指先に魔力が集中する。

勇者「呪文――――」

 騎士は勇者の指先を注視した。

騎士(くっだらねえ。お前は所詮この程度なのか、勇者)

騎士(もう茶番には付き合わねえ。次の呪文を躱したら、そのままぶった斬ってやる)

 そして、身を低く構え、勇者への突撃の姿勢を固める騎士。
 同時に、勇者の呪文が完成する。

勇者「――――『大雷撃』ッ!!!!」

 勇者の指先を注視していた騎士の頭上から―――閃光と轟音を伴って、雷が降り注いだ。



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