勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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214:名無しNIPPER[saga]
2016/05/08(日) 17:20:43.17 ID:niX7BoNT0
 しかしそんな勇者の願い空しく、いつまでたっても荒野を抜けることが出来ないまま夜を迎えてしまった。
 勇者と戦士は荒野にテントを立てて野営の準備を進める。

勇者「魔界にも夜ってあるんだな」

戦士「星も瞬いているぞ。そしてあれが……多分、私達の世界で言う月なのだろうな」

 漆黒の空、戦士が指差す先には、青く輝く月のような円があった。

戦士「最初は不気味だと思ったが、見慣れると美しくすら思える。何とも幻想的な光景だ」

勇者「辺りが薄青く照らされてる。結構強い光が出てるんだな。わりと辺りを見通せるから先に進めなくもないけど、ま、やめとこう。念の為な」

 テントを組み立ててから、勇者は戦士に中に入るように促した。

勇者「魔界の夜がどれくらいの時間続くのか分からないけど、とりあえず三時間を目処に見張りを交代しよう。まずは戦士が先に寝てくれ」

戦士「わかった」

 そう言って戦士はもぞもぞとテントの中に入っていった。

勇者「う〜、若干肌寒いな…火種になるようなものが無いから火も焚けないし…次に来るときは薪もある程度準備してきた方がいいな」

戦士「な、なあ……」

 勇者がごしごしと手のひらで体を擦って暖を取ろうとしていると、テントの中から戦士の妙に弱弱しい声がした。

勇者「どうした?」

戦士「そ、その……体を拭きたいから、ちょっと中で服を脱ぐけど……」

勇者「ファッ!?」

戦士「覗くなよ!? ぜ、絶対に覗いちゃ駄目だからな!!」

勇者「ファ、ふぁい!!」

 しばらくの沈黙の後、ごそごそと衣擦れの音がテントの中から聞こえてきた。

勇者(あばばばば! まずい! よく考えたら戦士と二人きりで夜を過ごすなんて初めてやんけ!!)

戦士(お、落ち着かない……! 今まではこうやって着替えたりする時は僧侶と交代でしていたから、安心していたけれど……今勇者が破廉恥な行動に出たとしたら、私にはそれを止める術がない……!)

勇者(あかん! 落ち着け! 意識するな!! 心頭滅却すれば火もまた涼し!! うおおおおおおお!!)

戦士(あ、いや……こんな傷だらけの女の体なんて、誰も見たいなんて思わないか……)シュン…

勇者(あかん!! よこしまな気持ちよどっかいけ!! 緊張感を保つんだ!! ああ、もう、敵の本拠地である魔界での初夜でなーにをこんな浮かれポンチな思考に陥っとるのだ!!)

勇者(しょ、初夜ッ!!!?)ボムッ! ←自爆

 結局、勇者も戦士もまんじりともせず翌朝を迎えたのであった。




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