485: ◆Tw7kfjMAJk[saga]
2016/11/30(水) 23:48:06.90 ID:Oz6oIwso0
ちょうどそう思った時、ぱさり、と未央の肩に何かが降ってきた。
「ひゃっ」
いきなりのことに未央は肩を跳ねて驚いてしまう。いったい、何が……。そう思って、肩に落ちてきたものを見ると、そこには見慣れたコートがあった。それがどういうことを表しているのか、未央が思いつく前にくっくっと笑い声が聞こえていた。
「ひゃっ、って。そんなに驚くことでもないだろ」
未央が目を向けると、そこにはプロデューサーが立っていた。彼はそのまま未央にマグカップを差し出した。
「……ありがと」
驚かされたことに文句を言いたい気持ちもあったが、その好意は素直に嬉しかったので、感謝を言って受け取ることにした。湯気が立ち上る、温かいココアだ。飲もうとしたが飲めなかった。それほど熱かったのである。
「明日はライブだってのに、こんなところで何してるんだよ」
呆れた様子でプロデューサーが言う。確かに、翌日にライブを控えたアイドルがこんな時間にこんなところで何をしているのか、と言う話だ。
「いやー……実は、緊張してまして」
返す言葉もなかったので、とりあえずごまかすことにした。そんな未央にプロデューサーは「ふーん」と口にして、にっ、と笑った。
「あんなにやけ顔してたのに、か?」
「なっ」
さっきの、見られてた!? いや、まあ、確かに、あのタイミングなら……。
自分でもだらしない顔をしているだろうと思っていたが、まさかプロデューサーに見られていたなんて……。さっきまでは寒かったのに、急に暑くなってきた。少なくとも、顔は熱い。恥ずかしい。
「まあ、それはそれとして……早く、中に入ろう。ここは寒い。風邪をひくわけにはいかないだろ?」
「……うん」
プロデューサーの言葉は正しい。未央はプロデューサーに続いて事務所の中に入った。
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