67:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:14:14.49 ID:V/baVpaao
結局、有希とは話をしてただけで昼飯食えなかった。あいつとの話が終わったあとに、
じゃあ、昼飯にしようかなんてとても言える雰囲気じゃなかった。まだ昼休みが終わるま
で二十分もある。夕也はまだ教室に戻ってない。あいつ、まじで屋上で麻衣の弁当を食っ
ているのだろうか。それはどうあれ、今から屋上に行って妹の弁当を食うわけにいかない
と俺は思った。有希の話が本当ならば、この件に関しては麻衣だって共犯者なのだ。
しかしどうしたものか。有希のことは正直今でも好きだと思うけど、有也の気持ちを考
えると、あれだけ待ち望んでいた有希の告白に、有希の気持ちに素直に応えていいのかど
うか。それに、有希に言われるまでもなく二人きりの兄妹である麻衣のこともある。もっ
と言えば、最近親しくなった二見のことだってないと言えば自分に嘘を付くことになるの
だろうか。
あいつは、今日の話をわかっていて俺に有希と会えって言ったのだろうか。とにかく夕
也と話をすべきなのだろう。
それにしても腹減った。そう考えたとき、タイミングを計ったように二見が目の前に現
れた。
「池山君」
「よう」
かろうじて俺は二見に返事した。
「ひょっとして落ち込んでる?」
「別にそんなことねえけど」
「でも酷い顔してるよ」
「酷い顔っておまえ」
実際、ひどい顔をしているんだろうな。俺はそう思った。
「悪い。でもそんな感じする」
「腹減ってるだけだよ。今日昼飯食い損ねたし」
「そうか。まあ、いきなり遠山さんにあんなこと言われたら食欲もなくなるよね」
「おまえ、何言ってるの」
「何って、単なる推測だけどさ。今日二人きりで中庭にいたみたいだし、妹さんと広橋君
は屋上で二人きりで何だかお葬式みたいに黙りこくって食事してたしね」
「おまえ、ひょっとして俺たちのこと探ってるのか」
「あたしがっていうか、広橋君って声大きいしさ。昼休みのあんたと広橋君の会話ってク
ラスの半分くらいは気にしてちらちら見てたよ」
「マジかよ・・・・・・。おまえもそんなとこまでよく観察してるな。よっぽど暇なんだな」
「本当はあたし、普段は観察するというより皆に見られる人なんだけどね」
「ああ? おまえちょっと自意識過剰なんじゃねえの。ぼっちなんて本人が気にしてる
ほど周りは気にしてねえよ。だからぼっちなんだろうが」
何でも知っているような二見の様子に少しだけむっとした俺は言わなくてもいいことを
口にしたのだけど、二見はまじめに俺の鬱憤に応えた。
「そういう意味じゃないよ。学校ではあたしが空気なのは自覚してるし、見られるってい
うのは別な場所の話」
でも、意味はわからない。
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