女神
1- 20
66:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:13:28.39 ID:V/baVpaao

 気がつかれていたのか。俺はそのときすごく焦ったし、何か自分が裸にされたようなひ
どい気分に陥った。

「君はあの頃は優しかったし、あたしのことをすごく気にしてくれた」

「何で今さら」

 本当に今さらな話だと俺は思った。有希への気持ちをきちんと口にしなかった俺には、
そう言う権利はないかもしれないけど、それにしても有希は結局夕也の方を好きになった
んじゃないか。

「今さらじゃないよ」

 有希が真剣な顔で俺を見つめていた。

「今さらとか言わないで。あたしも本当は君のこと好きだったから、その気持ちに応えた
かった」

「でも、ご両親がいつもいない家で、あんたに頼りきって暮らしていた麻衣ちゃんのこと
を考えると、あたしは君の気持ちに安易に応えるわけにはいかなかった」

「マジかよ」

 俺はようやく有希に、かすれた声で答えた。

「うん、マジ。今朝ね、電車の中で麻衣ちゃんにもう自分に素直になってって言われた。
それで、今でも麻衣ちゃんはあんたのこと好きだと思うけど、もう遠慮するのは止めよう
って思った」

 何が何だかわからないけど、これは俺の長年の想いが報われたってことなのか。ひょっ
として有希は、今でも夕也ではなく俺を好きなのか。一瞬ひどく幸福な感情が胸裏に満ち
た感覚がしたけど、次の瞬間そこに夕也の顔が浮んだ。

「夕也は?」

「え?」

「夕也はどうなるの? あいつ、一応俺の親友だし」

「夕には悪いことしちゃったと思う。あんたを忘れようと彼とベタベタしたし。でも、彼
とは付き合ってはいないよ、本当に」

「おまえ・・・・・・」

「あたしはあんたのことが好き。小さい頃からずっと」

「もう、自分に正直になるって決めたの。あたしはあんたが好きなの。あたしと付き合っ
て」

 夕也が有希のことが好きなことは間違いない。俺を忘れようとした有希に、その手段と
してこれでもかというほど好意を見せつけられてきた夕也の気持ちはどうなってしまうの
か。

「・・・・・・夕也はさ。さっき必死な顔で俺に言ったんだよな。おまえと一緒に昼休みを過ご
してくれって」

 有希が沈黙した。

「おまえ、あいつに何て頼んだの?」

 有希は返事をしない。

「あいつの気持ちを知ってるんだろ」

「それは。多分」

「今は返事できねえ。少し考えさせてくれるかな」

「うん」

 小さな声で俯いた有希が言った。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice