女神
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53:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 20:39:11.21 ID:Xae/YECko

 麻衣に依存しているとはこういうことなのだろう。俺たちの生活は両親が俺たちに与え
てくれる生活費に拠っているにしても、それを形にしてこの生活を成り立たせているのは
麻衣のこういう働きによるものだ。そして、麻衣は自分のそういう犠牲的な働き方に関し
てはこれまで苦情一つ口にしたことがない。俺は昼飯を食えなかったくらいでエキサイト
した自分の麻衣への怒りを後悔した。

「お兄ちゃんは眠いなら、今日土曜日だしもう少しこのまま寝てていいよ。お昼ごはんで
できたらまた起こしてあげるから」

 ちょっと昨日はこいつに辛く当たっちゃったな。俺こいつがいないと生活すら危ういほ
どこいつに頼りきっているのに。だいたい有希の差し金でこうなったんだ。妹は昔から有
希と仲がいいから、有希の戯言に気が迷うことだってあるだろう。

「俺も起きるよ。一緒に買い物に行くか。荷物運びくらいはするから」

「いいよ、別に。お兄ちゃんは寝てて」

「俺と一緒に買い物に行きたくない?」

 戸惑ったように麻衣が俺の方を見た。その白い整った顔が赤い。

「そんなことあるはずないじゃん」

「よし。これで本当に仲直りだな。着替えて出かけるか。昨日夕飯食わなかったからさす
がに腹減ったな。どっかで朝飯食おうぜ」

「うん・・・・・・お兄ちゃん」

「だからもう泣くなって」

 家の近くのショッピングセンターの一階にあるスーパーで買物を終えると、もう十二時
近かった。

「もう十二時か。どっちかって言うと朝飯というより昼飯の時間になっちゃったな」

「そうだね。お腹空いた」

「おまえは昨日の昼から何も食ってないしな」

「うん」

「買い物する前に昼飯食うか。俺も腹へったし」

「そうね。お兄ちゃん、お腹空いたでしょ」

「どこにする? おまえが行きたいとこでいいよ」

 麻衣はが俯いた。

「もう怒ってねえから。仲直りしたんだからいつもみたいにあれが食いたいとか言えよ」

「うん」

 麻衣が顔を上げてようやく微かに微笑んだ。

「じゃあどうする?」

「あのね、前にお姉ちゃんに教わったんだけど、このモールの中に美味しいパスタ屋さん
が出来たんだって」

 ようやくいつもの妹に戻ってくれたか。俺はほっとした。それにしても有希のお勧めの
店か。でも、麻衣はこれで完全にいつもの麻衣に戻ったようだ。

「いいよ。そこに行こうか」

「いつも混んでるから並ぶって言ってたけど、いい?」

「おまえが空腹を我慢できるなら別にいいよ」

「じゃあ、行こ。七階にあるんだよ」

「うん」


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