女神
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51:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 20:38:14.61 ID:Xae/YECko

「それで?」

「・・・・・・それでって。あたしお昼にお兄ちゃんと会えなくてすぐ後悔して」

「ああ」

「それでお姉ちゃんに謝って、やっぱりお兄ちゃんにお弁当を渡すだけでもしてきますっ
て言って。そしたら」

「そしたら、何だよ」

「そしたらお兄ちゃん中庭で」

「中庭で俺が二見と昼飯食ってたとこ見たということか」

「あ、あの。うん」゙

「それで早速、有希に言いつけたってわけか」

「それはそうなんだけど」

「うん?」

「それはお兄ちゃんがあたしとかお姉ちゃん以外の人と二人きりでいたのはショックだっ
たけど」

「それで?」

「でも、あたしが悪かったんだし。お兄ちゃんのせいじゃないと思ったから、そうお姉ち
ゃんに言ったの」

「そしたら?」

「お姉ちゃんは、あたしがお兄ちゃんを甘やかし過ぎだって」

「何だよそれ」

 正直、これにはむかっときた。有希が俺を好きではないことも夕也を好きなことも、そ
れはしかたがない。俺が文句を言うことではないからだ。だけど、そのことは有希が俺と
麻衣の関係に口を出していい理由にはならない。たとえ有希がこれまで麻衣の母親役をし
てくれていたとしても。

「そんなことないよってお姉ちゃんに言ったの。あたしがヤキモチ焼き過ぎっていうか、
お兄ちゃんに依存し過ぎてるからだって」

「そうか」

「お兄ちゃんごめんなさい。もう二度とこういうことはしないからあたしと仲直りして」

 俺が思わずため息をついた。

「俺さ、昼飯はいつものとおりおまえが用意してると思ってたから金とか全然持ってなく
てさ」

「うん。ごめん」

「金を持ってないんで学食にも購買にも行けねえし、そんでそん時に二見が声をかけてく
れたんだけどさ」

「・・・・・・うん」

「昼飯も食えない俺が、二見のその誘いに乗ったことでそんなに責められなきゃいけねえ
わけ?」

「だからあたしはそんなこと思ってないよ。お昼だってあたしだけ食べたらお兄ちゃんに
悪いと思って全部捨てちゃったし」

「え?」

 食わないで捨てたの? こいつ。捨てるくらいなら有希を振り切って俺のところに弁当
を届ければいいじゃねえか。

「ごめんねお兄ちゃん」

 でも。俺は少しだけささくれだった感情が収まり、心の仲が温かくなっていく気がした。
有希のことはともかく、麻衣は二人きりの兄妹なのだ。本気でこいつと仲違いしていいわ
けはないし、もっと実利的に考えれば麻衣が俺を嫌ってしまえば俺の生活が成り立たない。
食事だけでなく、洗濯や掃除とか。それは今日の夕食抜きの状態がいみじくも示している
とおりだった。


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