457:名無しNIPPER[sage]
2017/09/13(水) 00:01:31.23 ID:yJtoOnGFo
「浮気するなよ」
姉さんからのメールはこういう出だしだった。
やばい。
「冗談だよ。夕也のことは信じてるから」
胸が痛む。
「大好きだよ、夕也」
罪悪感とか少し胸が切ない気もするけど、もともと俺は自分でも認めるくらいの浮気性
だ。目の前に、身近なところにこれだけ可愛い、そして謎めいた女がいたら、これはもう
行くしかないだろう。
でも、優が何を考えているのかはわからなかった。文句を言ってからは、前よりもスマ
ホでなく俺に向き合ってくれていたとは思うけど、俺のことが異性として好きなのかどう
かはわからなかった。
「おまえら仲いいよな」
「二見さんって美少女だもんな。さすがは夕也。おまえならあの子とお似合いだよな。悔
しいけどよ」
そうじゃないのだ。俺はまだ優に意識されていない。何とかしなきゃいけない。いや、
姉さんのことを考えれば、優に意識されては困るのだけど。それでも俺は優に意識されよ
うに頑張った、いったい何がしたいんだ、俺は。
これはもう単なる恋愛じゃない。これは心理戦だった。
俺も含めて誰でもそういう経験はあるだろう。ちょっと冷たくしたり、優しくしたり。
そういう駆け引きには俺は慣れていたはずだった。言い寄ってくる女の子を振り回すあの
感覚。でも今までのそれは自分が優位に立っていた場合の心理戦だった。悔しいけど今は
違う。今の関係では俺の方が優の下位に立っている。それは優の心が読めないからだ。俺
のことが好きかどうかは重要な情報だけど、それだけではない。石井先輩のこととか、な
んでわざわざぼっちを選ぶのとか、女神とかいうこととか、俺には優の気持ちが全く読め
ないのだ。そんな面倒くさい女に引っかかっている場合かという気もしたけど、俺にはそ
のとき、何ていうか意地のような感情があったのだ。こういう難しい女を俺を好きにさせ
依存させたいという。そこに山があるからだとはよく言った物だと思う。
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20