419:名無しNIPPER[saga]
2017/01/31(火) 23:13:56.28 ID:ooGZg3gbo
そして。
ぎりぎりのタイミングだった。
会長が姿を消して数分たったところで二見さんが教室に戻って来たのだ。
「ねえ」
不審を露わにして二見さんがあたしに聞いた。
「先生、あたしのことなんて呼んだ覚えないってよ」
「そうなの? あたし確かに誰かから優ちゃんに伝えてって言われたんだけどなあ」
あたしは無邪気に不思議そうな声を出した。
「・・・・・・まあいいけど」
二見さんは気持ちを切り替えたようだった。
「それよか優ちゃん、明日の朝には東北に行っちゃうんでしょ?」
「うん。本当は昨日お父さんたちと一緒に行く予定だったんだけど・・・・・・」
そう答えて二見さんは教室内を眺めた。
「どうしたの?」
あたしは少し不安そうな二見さんの表情に何か快感めいた、嗜虐的な快感を覚えた。
「もしかして誰か探してる?」
「ええ・・・・・・まあ」
「優ちゃんの転校って急だったもんね。お別れを言えなかった人もいるんじゃないの」
「あのさ、浅井さん」
普段は人に媚びることのない二見さんがあたしに縋るような目を向けた。
「あの。あたしが職員室に行っている間、誰かあたしを尋ねてこなかった?」
「誰かって? 何人も教室を出入りしてたけど」
あたしは言った。
「例えば誰?」
二見さんはしばらくためらった。彼女がこの時何を考えているのかあたしには手に取る
ようにわかった。
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