404:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 23:31:56.68 ID:l/rfkXGJo
その時図書室のドアが開き中から出てきた会長があたしに声をかけた。
「副会長。ここで何してるんだ」
「会長」
不覚にもその時あたしは泣きそうな顔で会長を見た。
「何してるんだ・・・・・・とにかく手を離してやれよ」
「・・・・・・んだと」
先輩は低い声で威嚇するように会長のほうを見た。会長のことなんて少しも恐れている
様子はなかった。
「手を離してやれって、てめえ誰に向って口聞いてるつもりなんだよ」
「副会長は僕に用事があるんんだろ。君は邪魔しないでくれないかな」
生徒会長は落ち着いて言った。
その言葉に先輩は切れたようだった。先輩は握っていたあたしの腕を離したけど、その
ままで終らせるつもりはないようで、先輩はそのまま会長の方に詰め寄って行った。
「自分のことを僕なんて呼ぶやつが本当にいるんだな。おまえ、きめえよ」
腰を沈めた先輩はいきなり生徒会長の顔を殴った。殴られた生徒会長はそのまま床に沈
みこむように仰向けに倒れた。
あたしは思わず悲鳴をあげた。その悲鳴に気がついたのか図書室の奥から二見さんが出
てきて驚いたように床に倒れている先輩を見た。
でも、あたしの悲鳴を聞きつけたのは彼女だけではなかったようで、こちらに駆け寄っ
てくる足音が響いた。
先生だろうか。あたしは期待してそちらの方を見た。でもこちらに向って来たのはやは
り三年生の男子だった。その三年生は倒れている会長を足蹴にしようとしていた先輩を制
止した。そればかりか先輩に対して惚れ惚れとするような見事なストレートのパンチを放
ったのだった。
「何やってるんだてめえ」
三年生が殴られて床に沈み込んだ先輩の襟を掴んで言った。
あたしと会長にちょっかいを出していた先輩は結局その場に現われた三年生にぼこぼこ
にされたのだった。
「おまえ大丈夫だったか」
その三年生は、床に這いつくばってうなっている先輩には構わず生徒会長に話かけた。
「助かったよ」
会長がよろよろと身体を起こしながら自分を助けた三年生に言った。
「会長には世話になったからな」
三年生が会長に答えた。
正直この時の会長の姿は格好いいとは言えなかった。もちろんあたしを助けようとして
くれてはいたのだけど、この見知らぬ三年生が駆けつけてくれなかったらあたしも会長も
どうなっていたかはわからなかった。
「おい。てめえ、俺がいないとこで会長やこの子に手を出したら」
三年生は倒れたままの先輩を見下ろして駄目押しした。先輩は何か唸った。
「どうなんだよ」
「・・・・・・るせいな。わかったよ」
結局先輩は負け惜しみのようにそう言って立ち上がると、もうあたしとは目も合わそう
とせずに去って行った。
こうして見るとこの三年生は会長や生徒会の人たちの仲間のようには見えなかった。
どちらかというと先輩の仲間のように見えたけど、それでもこの見知らぬ三年生は迷わ
ず生徒会長を助けたのだった。
あたしは三年生にお礼を言ったけど彼はあたしのことはあまり気にしていないようで、
会長に大して怪我がないことを確かめると、じゃあなと会長に声をかけて行ってしまった。
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