388:名無しNIPPER[saga]
2016/11/02(水) 21:51:18.37 ID:P+eNXBC9o
・・・・・・私と会長のことを嫉妬している様子は全くない。二見さんのことを考えれば無理
はないのだけれど。
その時料理が運ばれてきた。さっきまで空腹を訴えていたはずの麻人は目の前に置かれ
たパスタに手をつけずに何か考えているようだった。
「食べないの? 冷めちゃうよ」
私は彼に注意した。それに答えず、麻人はぽつんと呟くように言った。
「麻衣と生徒会長、うらやましいよな」
「え」
「俺も彼女から嫉妬されたり誤解されたりしたい。例えば今俺とおまえが一緒に飯食って
るところを、あいつに見られて罵られたり泣かれたりしたいよ」
「・・・・・・どういう意味よ」
「もう喧嘩したり言い訳したりどころか、もうちゃんと別れることすらできなくなっちゃ
ったからさ。俺と優は」
二見さんを陥れた相手に対して激昂したり復讐を誓ったりしていた麻人は、これまでこ
の種の弱音を吐いたことは一度もなかった。暗い顔で悩んでいるところはよく見かけたし、
それに対して私も胸を痛めたりもしていたのだけど、麻人がここまで直接的に切ない心の
痛みを他人に吐露したのは初めてだった。
私も食欲をなくした。そして麻人に対してどう返事していいのかももうよくわからなか
った。
「どうせ会えなくなるならさ。最期に一度でもいいからあいつと会って直接振られたかったな」
麻人が微笑んだ。
「そういやあいつ、前に俺たちが別れる時は必ず俺が優を振った時だって真顔で言ってた
んだぜ。あいつの方からは絶対俺を振らないからって」
それは麻人と二見さんの短い蜜月の間にやり取りされた甘い会話だったのだろう。麻人
はこの先ずっとそういう過去の幸せだった思い出を抱きしめて生きていくつもりなのだろ
うか。
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