387:名無しNIPPER[saga]
2016/11/02(水) 21:50:07.34 ID:P+eNXBC9o
「腹減ったな」
私の手を引きながら店外に出たとき、緊張感のない声で麻人がそう言った。
「君はねえ」
私は軽く彼を睨んだ。
「そんな呑気なこと言ってる場合か」
「何で?」
麻人は答えた。
「あいつら仲直りしたんだから別に問題ないだろ」
無理もなかった。事情を知らない麻人にとっては無事二人が仲直りしたように見えたの
だろう。麻衣ちゃんが私と会長を目撃して抱いた疑惑は一旦は晴れた。その意味では麻人
の言うことも間違いではなかった。
でも会長が麻衣ちゃんに伏せている秘密は、未だに麻衣ちゃんの知るところにはなって
いない。会長は突然訪れた危機を乗り切ったのだけど、その実以前から抱えていた火種は
相変わらず燻っているのだ。
「どっかで飯食わない?」
麻人が再び空腹であることを蒸し返した。そういえば麻人が食べようとしていたハン
バーガーやポテトは、結局、店内のテーブルに置き去りにされていたのだった。
「いいよ。そうしようか」
もうお昼を過ぎていたけど、私も朝起きてから何も口にしていなかったことに気づいた。
「そこのモールが近いな。確かパスタ屋があったじゃん」
「うん。あそこ結構美味しいよ」
「知ってる」
「じゃあ行こう・・・・・・目立つからそろそろ手を離してくれる?」
「ああ、そうだな」
麻人は動じる様子もなく私の手を離した。
以前は確か並ばないと座れないくらい混んでいた店だったはずだけど、今日はすぐに席
に案内された。
窓際の席におさまった麻人はメニューを眺めて困惑しているようだった。
「どうしたの」
私は彼に声をかけた。
「いやさ。ミートソースが食べたいんだけど、ここ名前がミートソースじゃないんだよな。
どれだったかなあ。前に麻衣に聞いたことあるんだけど、写真が載ってないからよくわか
んねえや」
「これ」
私はボロネーズと書かれた部分を指差した。
「ああ、そうだった」
注文を終えると麻人は改めて私の方を眺めて言った。
「そういやおまえ、本当は会長と二人で何してたの? 妹の味方するわけじゃないけど学
園祭の打ち合わせしてるようには見えなかったぜ」
「本当に先輩とは何にもないよ。先輩は麻衣ちゃん一筋だし、私だって麻衣ちゃんの彼氏
とどうこうなろうなんて思ってないよ本当に」
「それはそうだろうけどさ。何かすごく親密そうに顔を寄せ合ってたからさ。麻衣みたい
な嫉妬深いやつじゃなくなってなんかあるんじゃないかって、普通に疑ったと思うよ」
「本当に何でもない。私の言うこと信じないの?」
麻人は笑った。
「俺が信じるかどうかなんてどうでもいいだろ? まあ、妹が納得したんだから別にそれ
でいいか」
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