女神
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379:名無しNIPPER[saga]
2016/10/12(水) 23:43:45.22 ID:am0+7R9Jo

 意外なことに副会長は今日も生徒会室に姿を見せていなかった。というか祐子ちゃんに
よれば授業そのものを休んでいるみたいだった。

「唯さんは単なる貧血でたいしたことはないって聞いてたのにね」

 祐子ちゃんがあまり気にしている様子もなく軽い口調で言った。

「何で副会長は学校まで休んでるのかなあ」

「さあ」

私は会長が現在進行形で副会長たちのことを探っていることを考えた。副会長は何かに
気がついて警戒しているのだろうか。

 でもその割には一方の主役ではないかという疑惑のある夕也の方は普通に授業に出てき
ていた。もちろん私とは会話をするどころか目すら合わせようとはしなかった。

 会長の指示通り副会長とはいつもどおり接することに決めてはいたけれども、副会長に
不審がられず普段どおり接することが出きるか正直とても不安だった。その意味では副会
長が不在と聞いて私は気が楽になったのだけど、副会長の不在は生徒会や学園祭実行委員
会にとってはあまり望ましいニュースではなかったのだ。

「ねえ。どうしよう」

祐子ちゃんが気軽そうな口調を変えて珍しく真面目に言った。

「みんな副会長に割り振られた作業が終っちゃいそうでさ。次にどうすればいい? って
聞かれてるんだけど」

「一々指示がなきゃ何もできないのかな、みんなは」

 私は少しイライラして強い口調で喋ってしまったようだった。祐子ちゃんが少し驚いた
ように私を見ている。

「まあ、そうは言ってもスケジュール管理をしていたのは副会長だったから無理はない
か」

 私は取り繕うように言った。

「ちょっと副会長のスケジュール表を見てみるよ。それから出せるような指示するから」

「うん、有希ちゃんお願い。それにしてもうちの生徒会長も副会長も責任感全くないよね。
学園祭の直前になって職場放棄するなんて」

 二人ともあんたには言われたくないだろうなと私は考えたけど、これはまあ彼女に一理
あった。私たちは今や責任者不在で学園祭の準備を何とかしなければならなくなったのだ
った。

 副会長はともかく会長が学園祭の準備を放り出して今何をしているのか、私にだけはわ
かっていた。そして正直に言うと少し心配にもなっていた。少し会長は性急過ぎないだろう
か。常識的に考えれば、今会長にとって今一番大切なことは二見さんが何のために誰に
よって陥れられたのかを解明することではないはずだった。今の会長にとっては大切なこ
とは二見さんを巡るできごとの解明ではなく、学園祭が無事開催されること、それに麻衣
ちゃんを安心させ満足させることのはずだった。それなのに会長は今や事態を解明するこ
とを一番の優先事項にしているようだった。

 麻衣ちゃんに断りなく、鈴木先生に二見さんの女神行為を告げ口してしまった罪悪感か
らか。それともそのことを麻衣ちゃんに隠しているという罪の意識をこれ以上保っている
ことに耐えられなくなって、たとえどんな結果になったとしても麻衣ちゃんに自分のした
ことを告白したいと思うようになっていたのだろうか。そしてそのために全容を解明して
麻衣ちゃんにそれを伝えると同時に、自分のしてしまったことを彼女に伝えようと思い詰
めているせいか。


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