378:名無しNIPPER[saga]
2016/10/12(水) 23:43:03.19 ID:am0+7R9Jo
私が、放課後学園祭の準備に向った時、会長は放課後の生徒会室の前で所在なげに立っ
ていた。
「会長、何してるんですか?」
私は驚いて尋ねた。学園祭の準備の指揮を執りにきたのではいだろう。多分会長は昨日
の話の続きをしようとして待っていたのだろうけど、生徒会長なのだから生徒会室の中で
堂々と座って待っていればいいのに。
「君を待っていた。昨日の件で」
会長がせわしなく答えた。
「少しだけど君に報告しておきたくて」
「それなら生徒会室で待っていてくれればよかったのに」
私は少しだけ飽きれて言った。「生徒会長が入り口で突っ立っていたら目立つと思いま
すよ」
「いや。時間がないんだ」
「麻衣ちゃんと約束ですか」
私は、その時ほんの少しだけ会長と麻衣ちゃんを羨ましく思った。こんなことになって
もお互いに共に過ごしたいと思える人がいる二人に対して。でも会長は首を振った。
「今日は一緒に帰れないって麻衣には言ったよ。それより中学時代の知り合いに連絡を取
ったんだ。多分、副会長は僕と同じ中学だろうから何か情報を得られるかもしれないし
ね」
「そうですか。先輩、私は何をすればいいんでしょう」
私はもう会長に頼り始めていたようだった。
「とにかく学園祭の準備に集中してほしい。またスケジュールのミスみたいなことがない
ようによく見ていてほしいんだ」
「それじゃ・・・・・・いえ、わかりました。副会長には何も言わず一緒に学園祭の準備に専念
します」
「頼むよ。じゃ、僕は中学の時の知り合いに会いに行くから」
そういい残して会長は生徒会室に顔を出すことなく足早に去って行った。
私はしばらく会長が消えて行った廊下の先を見つめていた。何だか夕方の日差しがいつ
も見慣れているのと違う角度から差し込んでいるようだった。
会長が動くと本当に真実が明らかになるかもしれないと改めて思った。でもそのことで私た
ちに何をもたらされるのかはまるでわからなかった。このまま真実が不明の方がいい
ということすらあるのかもしれない。
私はため息を押し殺して生徒会室のドアを開けた。
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