女神
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380:名無しNIPPER[saga]
2016/10/12(水) 23:44:28.24 ID:am0+7R9Jo

 いずれにせよ会長も副会長も不在な以上、これまで副会長先輩の補佐を努めてきた私が
その代理をするより他に手はなかった。私はこの日から謎の解明は会長に任せて、必死で
学園祭の準備を指揮することになったのだった。

 そうして夢中になってスケジュール管理や人員、物品の配分などを行っていると、今さ
らながらこれまでの会長の仕事の的確さや組織を動かす手際の良さなどが理解できてきた。
私の目からは副会長よく学園祭の準備を仕切っているように見えていたのだけれど、実際
に副会長の残した書類をチェックしていくと細かな荒や思い込みによる矛盾した計画の破
綻があちこちで見られた。

 前に祐子ちゃんが巻き起こした騒動も別に彼女だけの罪ではなく、副会長が彼女に与え
た指示が大雑把だったことが原因だった。こういう矛盾点を解消しつつ指示を求めてくる
実行委員たちに対応するのは楽なことではなかった。

 私は改めて会長の能力の高さに感嘆しながらふと考えた。唯さんという子は中学時代に
会長の下で一学年年下ながら生徒会の副会長を務めていたそうだけど、中学生時代にこれ
だけ能力の高い会長の姿を身近で見かけていたら、たとえ見かけは多少劣っていても、会
長のことを好きになったとしても不思議はないだろう。

 会長は容姿や運動神経や社交性などの点でコンプレックスを抱いていたみだいだけど、
女の子は必ずしも全部が全部そういうところに惹かれるわけではない。一般的なアイドル
として人気が高いのはイケメンなのだろうけど、たとえそうでなくても身近でてきぱきと
課題を処理する男の子の姿を目前にすれば、その子が会長のような男の子に惚れこむこと
だって十分にあり得るのだ。

 中学時代の会長と唯さん、それに二見さんの間には会長が語ってくれたこと以外にも何
か事情があるのだろうと私は考えた。でもそれ以上推察にふける暇はなかった。私は、祐
子ちゃんの不承不承の協力を得ながら、何とか学園祭当日までの間、綱渡りのように必死
で準備に努める以外の暇はなかったのだった。

 こうして私にとって忙しい一週間が過ぎた。来週の学園祭に向けて準備は佳境に入って
いたけれど、学校側の指示で週末の休みの作業は禁止されていたから私は、土曜日の朝、
久しぶりに寝坊した。

 朝起きるともう十一時近かった。とりあえず着替えようとしてベッドからもそもそと起
き上がったところで携帯が鳴り響いた。見知らぬ番号からの着信だったけど私は反射的に
電話に出た。

「遠山さん? 生徒会長ですけど」

 会長の声が電話から耳に響いてきた。私はこれまで会長から電話を貰ったことはなかっ
たけど、生徒会役員の緊急連絡表には全役員の携帯電話の番号とメアドが記されていたか
ら会長が私の電話番号を知っていても別に不思議なことではなかった。

「遠山です。おはようございます、先輩」

 私はまだ半分眠っていた心を無理に叩き起こしながら答えた。

「休みの日に悪いんだけど、これから会えないかな?」

 会長ははっきりとした声で、遠慮することなくそう言った。

「これからですか?」

 別に予定はなかったけど、何で休日に先輩が私を誘うのだろう。例の件のことなら休日
に会って打ち合わせするようなことではないだろう。校内で空いている時間に会えば済む
ことなのに。その時、一瞬すごく傲慢で自分勝手な考えが心をよぎった。まさか会長は二
見さんの件をだしに私をデートに誘う気ではないのか。以前、会長に告白されそれを断っ
た。その後、会長は麻衣ちゃんと付き合い出したのだけど、まさかまだ私に未練があるの
だろうか。

「そんなに時間は取らせないから。君の家の最寄り駅の駅前にマックがあるよね? 一
時間後にそこに来れるか」

 でもデートに誘うには会長の声には余裕がなかった。とにかくすぐに私に話したいこと
があるみたいだった。

「わかった。先輩の言うとおりにします」

「ありがとう」

 それだけ言って会長はすぐに電話を切った。


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