女神
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372:名無しNIPPER[saga]
2016/09/27(火) 00:13:49.83 ID:JF3eK7aYo

 翌朝、私は話しかければ普通には答えてくれるけど、放っておくとすぐに自分の考えに
浸ってしまう麻人と一緒に登校した。

 私にはその朝、麻人の気持ちを思いやる余裕はなかったので、黙って何かを考えている
彼の隣で自分の考えというか感慨にふけっていた。麻人のため、そして自分のために一連
の出来事の真相を知ろうと決心した私だったけど、その戦いは孤独なものだった。かつて
いつでも麻人と私と行動を共にしていた麻衣ちゃんも、そして夕也も、今では麻人と私か
ら距離を置いていた。

 それどころから夕也には、今や犯人である可能性さえ出てきていたのだ。今の麻人には
冷静かつ客観的に推理し判断する心の余裕はないだろう。そういう意味では、私は一人で
この重すぎる荷物を持ち上げようと試みるしかなかったのだ。

 そんな時、私の前に救世主が現われた。それが会長だった。会長の論理的な思考力は頼
りになる。一人で混乱した気持ちを持て余しながら必死に考えていてもなかなか結果は出
なかっただろう。そういう意味では会長の助力は本当に助かったのだけれど、それでも気
分の高揚は訪れてこなかった。この先、先輩によって謎解きが進むとしても、わくわくし
た感情は一向に感じるができず、重苦しい気分も今までと変わらなかった。

 考えてみればこれで真実が明らかになったとしても、麻人にとっても私にとっても何も
いいことはないのだ。麻人が復讐心を向ける対象ははっきりするだろうけど、それでネッ
ト上に流出した二見さんの画像や情報が消えることはない。そして、多分だけど二見さん
が姿を現して再び麻人と一緒に過ごせるようにはならないだろう。何となく私はそう思っ
た。

 夕也と副会長の会話を考えれば、夕也が二見さんを落としいれた出来事に関係している
ことに間違いがないだろう。麻人を助けてやれという彼の言葉で宙に浮いてしまう。つま
り、あれは冷たい嘘なのだ。

 麻人や私だけではなく、謎解きに参加してくれた会長にとっても真相が明らかになるこ
とによるメリットはないどころか、むしろデメリットしかなかった。麻衣ちゃんに黙って
行動を起こしてしまったことを悩んでいた会長だけど、この先真実が明らかになっていけ
ば、当然その中で会長が果たした役割だけを伏せておくことは出来ないだろう。だからこ
れは会長にとっては不幸へと繋がる道なのだけど、それでも昨日の会長は怯んではいな
かった。あんなにも愛しているはずの麻衣ちゃんは失うかもしれないのに、会長は事態を放
置するよりは真相を明らかにする方を選んだのだった。

 そして同じ理由で真相が明らかになることは、会長を慕っている麻衣ちゃんにとっても
幸福をもたらすことはないだろう。最愛の兄を陥れたのが大好きな生徒会長だと彼女が知
ったら。今だけは麻衣ちゃんは幸せなのかもしいれないけど、それは真相が明らかになる
までの間だけのことだ。

 それでももう後へは引けなかった。会長が自分に何が起こるかを承知のうえで協力しよ
うと言ってくれたのだから、私も初心を貫徹するだけだった。


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