373:名無しNIPPER[saga]
2016/09/27(火) 00:14:19.24 ID:JF3eK7aYo
「何か最近はお前の方が落ち込んでるみたいだな」
それまで黙っていた麻人が突然私を見て言った。
「何か悩みでもあるのか」
「昨日ちょっと寝不足だったから」
私は慌てて誤魔化した。
「そんならいいけど・・・・・・何かあるなら相談しろよ。俺たちの仲だろ」
私は麻人が昔からこういう性格だったことを忘れていた。いろんな意味で平凡だと言わ
れてきた麻人だったけど、私と麻衣ちゃんだけが知っている事実もあった。彼は大切な人
に対しては自分がどんな状態であっても常に気を配って可能なら援助しようとするのだ。
それがあまり知られていない麻人兄の美点の一つだった。
麻衣ちゃんに悩みがある時には、麻人は自分が風邪で高熱があり気分が良くないにもか
かわらず、長時間にわたって麻衣ちゃんの悩みを聞いて慰めたりということがよくあった。
そして今、彼のその性質は私に向けられたようだった。彼が一番好きな恋人としての女性
は二見さんだ。そして意味は違うけど、家族として一番大切にしているのは今でも麻衣ち
ゃんだろう。では、私はどうだろう。麻人の意識の中では私はどういう位置を占めている
のだろうか。
「ありがと。何かあったら相談させてもらうよ」
「そうしろ。俺だって今までおまえには心配かけてるんだしお互い様だろ」
幼馴染としてか。それとも過去に私を振ったことが彼の中では負い目となっているのだ
ろうか。
校内に入ったところで半ば無意識に私は部活棟の方を眺めた。案の定、麻衣ちゃんと会
長が寄り添って部室棟を出て来た。会長は穏やかな気持ちで過ごせているのだろうか。
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